Q1:紫外線とは?
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A1
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紫外線とは、日焼けを起こしたり殺菌する力を持つ、目には見えない光線のことです。紫外線は目には見えない光線ですが目に見える光は可視光線といい、色はその波長によって様々に異なって見えます。いわゆる虹の七色で、最も長い波長が赤色、短くなるにつれて橙、黄、緑、青、藍となり最も短い波長域が紫色です(図1参照)。
紫外線は、その可視光線の紫色よりもさらに短い波長域(波長:1〜400nm)の光線で、紫色よりも外側の波長域なので紫外線(UV)といいます。
紫外線の生物に与える影響は、波長によって大きく異なるため、その影響の度合いから紫外線は、UV-A(波長:315〜400nm)、UV-B(波長:280〜315nm)、UV-C(波長:100〜280nm)の3つに区分されます。
一方、可視光線の赤色よりもさらに長い側の波長域は赤外線といいます。
語句の説明
・殺菌
Q3参照して下さい。
・光線
光のことです。通常、紫外線、可視光線、赤外線のことをいいます。
・波長
電波や音波などの山と山、谷と谷との距離のことです。
・虹の七色
日本では一般的に、七色(赤、橙、黄、緑、青、藍、紫)に分類されていますが、国によっては五色や六色に分類されていることもあります。
色は連続的に変化しているので厳密には何色と言い切ることはできません。
・1〜400nm
紫外線の波長域の明確な定義はありませんが、ここでは、JIS Z 8113照明用語(1998)に記載されている「可視放射の波長より短く1nmまでの放射」から1〜400nmとしました。
・nm
長さの単位でナノメートルといいます。1nmは1000分の1μm(ミクロン)です。
1μmは1000分の1mmです。
・UV
英語のultraviolet radiation の略で紫外線のことです。学術的には紫外放射と訳されていますが、ここでは従来からの紫外線という呼称を使用しています。紫外線は、以前使用されていたultraviolet rays の訳語です。
注)英語でraysからradiationに変更された理由
従来は電磁波の長波長側を波(wave)、一方粒子としての性質が強い短波長側を線(rays)とした2種類に区分(図1参照)されていましたが、近年、波と線の境界に位置する紫外線、可視光線、赤外線の波長域は波と粒子の性質を併せ持つということで、新たな名称(radiation)で区分されたことによります。
参考文献
1)環境省:紫外線環境保健マニュアル2008
図1:電磁波の各波長と名称
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Q2:紫外線の人体に対する影響は?
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A2
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紫外線は、表1に示すように、波長によってUV-A、B、Cの3種類に区分され、それぞれ作用が異なります。
UV-A、Bの二種は日光に含まれ、いわゆる日焼けを引き起こすものとして知られています。UV-A(315〜400nm)は肌を褐色にする作用が、UV-B(280〜315nm)は水ぶくれ等の皮膚炎を引き起こす作用があります。
このため、屋外で長時間活動する場合には、PA、SPF等の指標を参考に日焼け止めを使用することが有効です。
UV-C(100〜280nm)は日常生活で浴びる可能性はほとんどありませんが、浴びた場合、角膜炎等の深刻な影響を及ぼす恐れがあります。また、皮膚ガンの発生リスクはUV-A < UV-B < UV-Cと高くなっており、UV-Cは他の波長と比べ、格段にそのリスクが高いとされています。
語句の説明
・UV−A (315〜400nm)
UV-Aは通常の日差しにも含まれている光線です。ヒトの皮膚に照射されると、表皮内でメラニン色素が合成されて、肌の色が褐色ないし黒褐色になる色素沈着が起こります(英語ではサンタンと言います)。
真皮の奥まで届いて劣化を促進させ、シミやシワの原因となることもわかっています。
日焼け止めでは、対UV-A指標としてPAが用いられています。
・UV−B (280〜315nm)
UV-Bは、夏の強い日差しに多く含まれている光線です。ヒトの皮膚に照射されると、紅斑が形成され、さらに大量に浴びると、水ぶくれや皮が剥けるなどのやけどを起こします(英語ではサンバーンと言います)。また、日光による皮膚ガンの主因と見なされています。
一方、皮膚内でビタミンDを生成される効果もあり、健康線と呼ばれた事もあります。
日焼け止めの対UV-B指標としてSPFが用いられています。
・UV−C (100〜280nm)
UV-Cは上空のオゾン層によって吸収され、地表には全く届いていない光線です。非常に危険な光線であり、UV-Bと比べはるかに少ない照射量で発ガン性があります。
また、微生物に対しては、死滅に至る甚大な傷害を起こしますが、紫外線ランプ等による殺菌にはこの作用が用いられています。
肌、目に対する被曝許容照射量は波長254nmにおいて、6mJ/cm2とされています。
・紅班
真皮乳頭層の血管が拡張・充血することにより、肌が赤味を帯びる現象。
・被曝許容照射量
紫外線ランプ等の人工光源を用いる際には、被曝許容照射量である6mJ/cm2(波長254nmの場合)以下を遵守することが重要です。
曝露の恐れのある作業を行う場合には、保護面、手袋等の保護具着用が必須となります。
・日焼け止めの指標 PA、SPF
日焼け止めのパッケージに記載されている指標にはPAとSPFの2種類があります。
PAはUV-Aを、SPFはUV-Bをどの位防ぐことができるかを示しています。PAは+の数が多い程効果が高く、SPFの数字は塗布前の何分の一になるかを示しています。PAは日本独自の指標で+、++、+++の3種類からなり、SPFは日本国内では最大で50+となっています。
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Q3:紫外線による殺菌の仕組みは?
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A3
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紫外線による殺菌(不活性化)効果は、UV-Cの中でも260nm付近の波長に特異的に高く存在します(図2参照)。
これは細胞内のDNA(核酸)の吸収極大とほぼ一致する(図2参照)波長で、紫外線の作用を及ぼす部位がDNAであることを示しています。
DNAに紫外線が照射されると同一鎖上に隣接しているチミンの箇所に本来起こりえない同一鎖上同士のチミンが結合した二量体(ダイマー)が形成されます。こうなると正常な複製ができなくなるので生命にとってはまさに致命的なことになります(図3&4参照)。
DNAは生命にとって設計図ともいえる最も重要な物質であるため、この作用が紫外線による殺菌(不活性化)機構と考えられています。
語句の説明
・DNA
DNA(RNAも同様)とは、すべての生命現象を発現させる最も重要な遺伝物質です。通常、二重らせんの状態で存在し、その二本鎖は4種類の塩基【A:アデニン、G:グアニン、T:チミン(RNAの場合はU:ウラシル)、C:シトシン】で向かい合って結ばれていますが、このときアデニンとチミン(ウラシル)、グアニンとシトシンという対でしか結ばれません。
尚、各固有の遺伝情報は、この4種類の塩基の鎖上での並び方、例えばAGT,TCA等と3個ずつを単位とした配列の仕方で決定されます。
生命にとって最も重要なことは自己複製(子孫を増やすこと)ですが、DNAが複製される時、二重らせんがファスナーが開くようにほどけて一本鎖となり、それぞれの鎖を鋳型として複製されていきます。
その際、AとT、GとCという対でしか結ばれないために複製される相手側は常に前と同じ配列となり、結局元と全く同じ二重らせんが2組できることになります。
参考文献
1)大垣眞一郎:"紫外線照射による消毒技術の基礎概念"、造水技術、Vol.15、No.1、p.33〜39(1989)
2)金子光美:水の消毒,p.230,(財)日本環境整備教育センター(1997)
3)大森豊明ほか:水-基礎・ヘルスケア・環境浄化・先端応用技術,p.475,株式会社エヌ・ティー・エス(2006)
4)大森豊明ほか:水-基礎・ヘルスケア・環境浄化・先端応用技術,p.474,株式会社エヌ・ティー・エス(2006)
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